大般若祈祷法要1月5日修行します

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 『大般若経』は、仏教の中心思想である一切皆空の理(ことわり)が述べられています。

 大般若会とは、『大般若経』六百巻を転読(てんどく)することによって、『般若経』の空(くう)の教えを体得し、すべての苦厄(くやく)を消しさって、内外の怨敵(おんてき)を退散(たいさん)させ、五穀豊穣や国家安寧(こっかあんねい)を祈念し人びとを幸福な生活にみちびいてゆくことを目的とした大法要です。

 有名な『般若心経』も、玄奘三蔵法師が翻訳したとされています。みじかいお経の中に、仏教のエッセンスがこめられている『般若心経』にくらべるなら、『大般若経』六百巻は膨大ですので、僧侶がたは分担して転読(偈文を唱えながら一巻一巻パラパラとする)し、はじめに大きな声で「大般若波羅蜜多経巻第何々巻」、と唱え、転読し、最後に一回ずつ、また大きな声で「降伏一切大魔最勝成就」(一切の大魔を降伏すること最も勝れて成就せり)と喝破されますので、それにあわせて、皆さまのご祈念のことをおもい浮かべられ、悪趣の退散や諸願成就を念じられるとよいと思います。

 『西遊記』では玄奘三蔵がインドにお経を取りに行く物語でありますが、実際には中国に帰ってから、持ち帰った経典の翻訳という大事な仕事に取り組んだことが重要です。玄奘三蔵が翻訳した経典は合計75部、1335巻に達する。この分量は、中国歴代の訳経総数の4分の1にあたり、いかに玄奘三蔵が偉大な翻訳者であったかがわかります。
玄奘三蔵の翻訳で特筆すべきはなんといっても『大般若経』600巻の翻訳でありましょう。玄奘三蔵は、晩年の生命力のすべてをかけて、4年に近い年月がかかりました。この翻訳作業が完了するやいなや、供養がおこなわれ、多くの不思議な瑞祥(めでたいできごと)がおこり、唐の高宗皇帝は、とくに『大般若経』へ序文を寄せました。このように、玄奘三蔵の翻訳が終わった時からすでに、人びとのあいだでこのお経に対する信仰が語られており、今に至る大般若会の原点が翻訳完了時にあったことがわかります。そして、翌664年2月5日に玄奘三蔵は亡くなります。『大般若経』の翻訳は玄奘三蔵の最後の大事業であったのです。
日本に伝えられたのは、7世紀の末頃のことと思われます。とくに天皇や豪族たちが発願し、当時の高僧たちが転読するのですが、その目的が、怨霊(おんりょう)をしずめる、災厄をのがれる、疫病(えきびょう)をはらうといった、世俗的な苦悩からの離脱の方に重点がありました。五穀豊穣や国家安寧(こっかあんねい)といったものよりも目立っていることが注目されます。これは、もともとの「大般若」の空の教えとは、ちょっとつながりがないように見えますが、空を空じる力と考え、「ありがたくないもの」を空じ、退散せしめる、ひとつの呪力(不思議な霊力)と考えているところは、いまの大般若会にいたるまで一貫しているといえます。このことは、また、『般若心経』が呪力をそなえた、ご祈祷のお経として、昔からずっと信仰されていることと同じであるといえましょう。


2013年12月30日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : rinsenji